バングラデシュ南西部沿岸域において,飲料水の塩水化とそれがもたらす健康被害が環境難民化のリスクを高める

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バングラデシュ沿岸域における塩害の影響を対象とした研究論文を発表しました.バングラデシュは河口デルタの発達した国で,気候変動や海面上昇に対して非常に脆弱です.同国の南西部沿岸域は,長期にわたる洪水や高潮による浸水によって繰り返し壊滅的な被害を受けています.2007年のサイクロンSidrと2009年のサイクロンAilaの後,飲料水の主な供給源が地下水の地域において,地下水の塩害が深刻となり,塩分に汚染された飲料水の継続的な利用によって,地域の人々が健康上の問題に苦しんでいることを明らかにしました.平均世帯医療支出は大幅に増大し,ただでさえ脆弱な家庭経済に大きな圧力となっています.このまま十分な対策を取らない場合は,近い将来,気候変動影響の深刻化によって,バングラデシュの沿岸部から国内の他の地域へ,あるいは国境を越えて,より多くの人々が環境難民化する可能性があることを指摘しました.

左の写真は汚染されていない飲料水を遠方から確保している様子です.右の写真は塩分に汚染された飲料水を摂取し続けたことが原因と思われる皮膚病の様子です.このほかにも飲料水の塩分汚染が一つの原因と考えられる様々な疾病が見られます.

Publication

Rakiba, M. A., Sasaki, J., Matsuda, H. and Fukunaga, M. Severe salinity contamination in drinking water and associated human health hazards increase migration risk in the southwestern coastal part of Bangladesh. Journal of Environmental Management, 240, 238-248, 2019. DOI(2019年5月22日までこちらから無料で読めます)

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